総合治療症例
写真は初診時のものです。正面から見ると、下あごの歯が上あごとの歯肉や歯の根っこと直接咬んでいます。
上あごにはきちんとした歯が3本程度しかありません。
約1年間後には写真のように改善されました。上あごの根っこだけになっていた歯も全部抜いたりせずに、4本は入れ歯の下に固定用として(入れ歯が落ちたり、動いたりしないように)残しております。下あごについては、虫歯治療のみ行いました。
終了時正面
終了時上顎義歯無し
終了時上顎
終了時下顎
写真は20代前半のお若い方で、歯周病ではなく、虫歯により崩壊寸前になってしまった方です。
上あごの前歯数本は根っこだけになって、歯肉の下に隠れています。下あごの前歯も虫歯が大きく、今にも溶けて無くなってしまいそうです。
この症例も約1年かけて治療を行いました。虫歯が骨の近くまで進んだ歯は抜歯し、それ以外については全て削って、かぶせもの(冠、と言います)を作り、歯がなくなった部分については入れ歯を装着しました。
入れ歯症例
多くの歯を失った場合、大半の方は入れ歯を入れることになると思います。無くなった歯が1~2本のときには前後の歯を削ってブリッジにすることもできますが、それ以上の時には、そのまま放置するか、はたまた無理してブリッジを入れるかと悩まれるものです。最近ではインプラントが安全にできるようになりましたので、いずれはそうすることもできるでしょう。しかし、抜歯直後の軟かい骨にインプラントをすぐ入れることは、そんなに良いことではないと私は確信していますし、実際、少し待ってからインプラントの手術を行っています。
入れ歯は邪魔でいやなもの、しゃべりにくいし、食事もおいしくない・・・いろいろな話を患者様から今まで聞いてきましたが、それは入れ歯に恵まれなかったからではないでしょうか。
入れ歯を大きく分けると「総入れ歯」と「部分入れ歯」に分かれます。総入れ歯については、残っている歯にバネをかけて入れ歯を安定させることは(基本的には)できません。しかし、部分入れ歯については、残っている歯をうまく活用すれば、かなり期待できるものを入手することが可能です。
入れ歯を作るに当たって、どうしても避けて通れないのが、意外かもしれませんが「力学」、つまり噛むことによって入れ歯が動いたり、沈み込んだりするのを如何にして防ぐか、を考えることなんです。その上で、どうしたら発音がしやすくなるのか、邪魔に感じないかをプラスして入れ歯を作れば、自ずと、とってもいい入れ歯ができあがります。
これから、私の製作した部分入れ歯のなかの基本的なものについてご紹介させていただきます。いずれも、もう3年以上に渡りなんの問題もなく使っていただいている入れ歯です。
上あごに、犬歯2本、奥歯2本の計4本だけが残っています。
本来これだけ歯がないときには、上あご全体を覆うような入れ歯になりますが、歪んだり曲がったりしない金属を使用することにより、入れ歯を小さく・薄くすることでき、異物感の少ない入れ歯に仕上がりました。
下あごで、左右とも奥歯がありません。このような場合には例外なく左右の歯のない部分同士を結びますが、
その際に、べろ(舌)の前を金属の棒やプラスティックが通ることになります。
この入れ歯では、ベロ(舌)の前を通る部分を金属とし、しかもたいへん薄く作ることにより、異物感を低減してあります。
上あごで、前歯が4本、奥歯が2本ありません。このような場合には、上あごのほとんどを覆ってしまう様な入れ歯になりがちです。また、前歯の方に金属の輪っか(入れ歯が落ちないようにするためのもの、"クラスプ"と言います)が露出してちょっとかっこ悪いかもしれません。
この入れ歯も金属を使って薄く、小さく作ってあります。また、前歯には輪っかを掛けず裏側の突起のみにとどめ、なるべく"見栄えよく"作ってあります。前歯に輪っかを掛けなくてもこの入れ歯が落ちたり動いたりすることはありません。
入れ歯の力学を考えれば当たり前のことなんです。
下あごで、右側だけに歯がありません。入れ歯を一見すると、歯のない数に比べて大きい用に感じられるかもしれません。
ちょっとココで専門的になりますが、入れ歯に加わる力について説明いたします。入れ歯に加わる力には
[1] 食べ物を噛んだときに入れ歯を沈み込ませる力
[2] 粘るものを食べたときに入れ歯をはずそうとする力
そしてこれが一番やっかいなのですが [3] 入れ歯をガタつかせたり、不安定に動かしたりする力です。
[3] のやっかいな力に抵抗するには歯のない部分の反対側(例えば、右側に歯がないのであれば左側)の歯に金属の輪っか(クラスプ)を設置すると、入れ歯が非常に安定し動かなくなります。
この入れ歯では、右側の歯の無い部分の前後と、左側の合計3カ所に輪っかを掛けてあります。
右側の歯のない部分と左側の輪っかとは薄い金属板で結んでありますので、それほど大きな違和感はありません。
このようにすれば、残っている歯にも負担を掛けずにいろいろなものが食べられる訳です。
インプラント症例
2本歯がない部分を直す場合
下顎片側術前
下あごが総入れ歯になった方の中には、あごの骨の減りが大きく、入れ歯がまさに"下あごにのっているだけ"の状態を呈している患者さんが居られます。総入れ歯の患者さんの内の2割くらいでしょうか。
このような場合、理想的には前述のように6本以上インプラントを埋め込んで、ブリッジにした方が良いと思われますが、手術時間や費用の面から、左写真のように2本のインプラントを土台として埋め込むことにより、動かない入れ歯を製作することが可能です。
下顎片側術後
そこで左写真のように、元の歯があった場所にインプラントを埋め込んで、それを土台にして人工の歯(冠)を作ればよいわけです。私がインプラントを始めたのは18年ほど前からですが、その当時から、このような症例が約半数を占めていました。現在でも、半数以上はこのように奥歯がなくなってしまい、入れ歯になるのを避けるためにインプラントを入れています。
インプラント埋め込みから冠(差し歯)装着までの期間 |
3~4ヶ月(下あご)/4~6ヶ月(上あご) |
手術料および冠(差し歯)代の合計 |
55万円より
お作りする人工の歯(冠)の種類(白金の合金、陶材、硬質プラスチック)により費用は変わります。 |
1本だけインプラントで直す場合
上2術前
前歯が1本なくなってしまった方です。通常このような場合には両隣の歯を削って前述のブリッジを入れることがほとんどでしょう。しかし、全く虫歯がない歯を削るのは、患者さんも歯医者さんも躊躇するものです。私もできれば削りたくありません。
下顎片側術後
このようなときには左写真のようなインプラントにすれば、周りの歯を削る必要はありません。本例は前歯ですが、奥歯にも同じようにインプラントをすることができます。ただし、上あごの奥歯1本だけのインプラントは、上あご奥の骨の強さが弱いことから、余りおすすめできません。
インプラント埋め込みから冠(差し歯)装着までの期間 |
3~4ヶ月(下あご)/4~6ヶ月(上あご) |
手術料および冠(差し歯)代の合計 |
35万円 冠の材質は陶材になります。 |
上あごのみ(もしくは、下あごのみ)をインプラントブリッジで直した場合
上下フル術前
上下あごの歯が歯周病のためにほとんどなくなってしまった方です。通常の場合例外なく入れ歯で直してゆくわけですが、インプラントで直していく方法としては、
a.上下のあごに、それぞれインプラントを5~8本埋め込んで、その上にインプラントブリッジを作っていく。
b.後述しますが、入れ歯が動かないように土台としてインプラントを2~4本埋め込んで、その上に入れ歯を作る。の2通りがあります。
ちょっとココで余談になります。総入れ歯や大きな入れ歯を入れている方がなぜ入れ歯に満足しないかをお訊きする機会が多いのですが、だいたい、「邪魔である(話しにくい、異物感が大きい)」、「よく噛めない」のいずれかを訴えております。
ただしいずれの理由も患者さんにより個人差が大きく、入れ歯に対して全く何の不満も言わない方もいらっしゃれば、もう生きている楽しみがないとまで言い切る方まで居られます。
話を戻します。下写真は、先ほどの方の上下のあごにインプラントを合計16本埋め込んでインプラントブリッジを装着したものです。患者さんの話をそのまま記させていただくと、自分の歯があった頃よりも今の方が噛めるし、食事もおいしいそうです。まあ、歯がなくなって苦しんでおられた期間が長かったので、このように感じておられるのでしょうが、担当医としては光栄な限りです。
インプラント埋め込みから冠(差し歯)装着までの期間 |
3~4ヶ月(下あご)/4~6ヶ月(上あご) |
手術料および冠(差し歯)代の合計 |
210万円より 埋め込むインプラントの本数およびお作りするインプラントブリッジの種類(白金の合金、陶材、硬質プラスチック)により費用は変わります。 上下にお作りするときにはほぼこの倍額がかかることになりますが、これについてはご相談に応じます。 |
入れ歯固定のためにインプラントを2本埋めて入れ歯を作る場合
上OL下顎
上OL義歯内面
上OL下顎義歯付
上OL正面
下あごが総入れ歯になった方の中には、あごの骨の減りが大きく、入れ歯がまさに"下あごにのっているだけ"の状態を呈している患者さんが居られます。総入れ歯の患者さんの内の2割くらいでしょうか。
このような場合、理想的には前述のように6本以上インプラントを埋め込んで、ブリッジにした方が良いと思われますが、手術時間や費用の面から、左写真のように2本のインプラントを土台として埋め込むことにより、動かない入れ歯を製作することが可能です。
構造的には、インプラントの先端に金属突起が付与してあり、その部分に入れ歯内面に設置したゴムが入り込むことにより入れ歯が固定されます。ただしこの方法の欠点としては、時間と共に入れ歯内面のゴムが劣化しますので、年に1、2度程度ゴム交換が必要なことです。
この方法自体は下あごに適していますが、埋めるインプラントの本数を増やせば、上あごにも適応可能です。
なお、本例のようにあごの骨の減り方が顕著でなくとも、インプラントを2本入れて固定源にすると総入れ歯の噛み心地やかみ砕く性能はかなり上がると考えて結構です。
インプラント埋め込みから冠(差し歯)装着までの期間 |
3~4ヶ月(下あご)/4~6ヶ月(上あご) |
手術料および入れ歯代の合計 |
55万円より
お作りする入れ歯の種類(プラスチック、ステンレス、白金の合金)により費用は変わります。 |
ゴムの交換代 |
1回5,000円以内(年1~2回必要) |
GD(グラディア・ダイレクト)症例
ひとむかし前まで歯の詰め物といえば、金属か、もしくは、白いことは白いけれどいかにも"詰めました"といった感じのものがほとんどでした。奥歯の場合にはそれでも良いのですが、下あごの歯や見えるところ、前歯の場合には"少しかっこわるいかなー"と感じた経験がおありになるかもしれません。
ここで歯の構造についてご説明いたしますと、歯は内側から(1)歯髄(歯の神経)、(2)象牙質、(3)エナメル質の順の構造になっています。
(1)の歯髄は内部に神経や血管が入っており、硬いものではありません。
(2)の象牙質は少し黄色がかった硬い歯の部分であり、透明感はありません。最も外側の(3)エナメル質は非常に硬く、人間の体の中では最も硬いと言われており、色彩的には透明感の高い部分です。
前歯が虫歯になって健康保険を利用して詰め物をする時には、ほとんどの場合「1色(単色)」のプラスティック材料などを詰めますが、実際の歯の構造を考えますと、(その深さにも依りますが)まず象牙質に当たる部分には透明でない材料を詰めて、その上(外層)のエナメル質に当たる部分には透明感のある材料を詰めるべきでしょう。そうすると自然の歯に非常に似て見えるものです。
色調についてですが、象牙質には10色以上、エナメル質にも5色以上の色があることから、10×5=50種類以上の歯の色があることになり、また、先端部と歯ぐきに近い(スソ)部分では色も違いますし・・・ということで、いくら白くても1色で詰め物をしてそれをきれいに見せることは非常に困難と言えます。
そこで当院では、虫歯や変色部位に詰める(充填する)ための材料= 「グラディア」および「グラディア・ダイレクト」をご用意しております。この材料は、小さな虫歯や少し欠けた程度ならば、用意した40色以上の色を組み合わせて元の天然歯のように直すことが可能です。歯をたくさん削る必要もありません。
では、実際の症例をご覧下さい。
※「グラディア」および「グラディア・ダイレクト」は保健適応ではありません。直す大きさや使う色数にも依りますが、1本あたり2万円~4万円かかります。
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右上の小臼歯と呼ばれる歯のスソに詰め物(矢印)があります。周囲とは色も違いますし、段差もあります。
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グラディアで再充填しました。象牙質色:DA4 透明色(歯頚部色):CT3)
所要時間は20分です。
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右下の小臼歯と呼ばれる歯のスソに虫歯(矢印)があります。
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グラディア・ダイレクトで充填しました。(象牙質色:A3 透明色(エナメル色):DG)所要時間20分です。1つ手前の歯はまだ、治療しておりません。後日治療いたしました!
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前歯が事故で欠けてしまいました。幸い神経は出ていませんでした。今まではこのような場合、歯を1周削って白い冠(差し歯)を被せていました。しかし、治療が最低でも2回かかり、また、冠が完成するまで1週間ほど待つ必要があります。
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グラディア(ダイレクト)で充填しました。象牙質色:AO3+A3 透明色(エナメル色):NT+E3)所要時間は40分です。
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前歯の審美不良です。再虫歯にはなっていませんが、治療していることがすぐわかります。
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グラディア(ダイレクト)で再充填しました。(象牙質色:ODC3+C2 透明色(エナメル色):E3+NT+EI1)所要時間30分です。